恋のイベント

私はなかなか気付かない。
女性が醸し出す、好きのサインに気付けないし、恋愛のイベントもスルーしてしまうことが多い。
あとになって、ああ、あれはそういうことだったのかと後悔しても遅い。
そんな人生だ。

高校2年の時だ。
クラスで仲の良かった女子がいて、私は彼女の相談相手になっていた。
相談とは恋愛相談で、中学の時から密かに好きだった男子が高校で一緒のクラスになれたから、なんとかしたいということだった。

私は人が助けを求めると、自分のことはさておいて、最大限の力と慈しみを持って接するような人間であると自分で思う。
その時もそうだった。

恋愛がまだわからないなりに、彼女の言う彼の良い所に共感し、何とかうまくいくように行動した。
しかし、そうして彼と一緒に行動する内に、許すことのできない発言を聞いてしまったのである。

私は彼女のことを本気で考えた結果、この男はやめた方が良いと真剣に忠告した。
真剣過ぎて、周りのクラスメイトが何かあったかと軽くざわざわし始めたくらいだ。

だが彼女は彼のそんなところもわかっているようで、私の言うことを肯定しながらもまだ好きでいるというようなことを言っていた。
しかし、ほどなくして彼女は私に電話をかけてきて、彼を諦めたという話になった。

私は、彼は人間としてはいいやつだが、男としては駄目だという話をし、彼女はこれからは彼を少し離れたところで見てみると決め、電話は終わった。
結局そのあたりが転機で、私のことを気にし始めていたことが後々わかった。

私のふいに言ったひと言を真に受け、向こうだけ付き合った気になったということも後で知らされた。
私は何も気付かなかった。
人から人へ向く感情には敏感だが、自分に真っすぐ向けられた矢印は見えなかった。

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